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上質な遺伝子 12

「子宮って、女性の子宮?」
「そう、まさにその子宮。ギリシャ時代に、女性がわけの解らないことを
言い出したり、極度に精神不安定な状態に陥ったり、パニックになったり、
女性に顕著にみられるそういう精神状態は、きっとなにか子宮からからく
る悪い病気じゃないかってことで名付けられたらしいのよ。なんだか、
皮肉よね。女性を馬鹿にしてる。」
EVGENIAは、おしりパンを200℃にセットしたオーウ゛ンにかけた。私は
煙草の火を消し、すっかり冷めてしまったコーヒーを口にふくんだ。
「そうかしら。それって、とっても面白い話だと思うな。女性のヒステリーは、
子宮の叫びだと思われていたってことでしょ。ギリシャ時代から、きっと
そのずっと前から、女性は相も変わらず女性ってことなのね。なんだか、
それって感動的な話に思えちゃう。きっと、女性のヒステリー
には大きな意味があるのよ。生命のって言ったら言いすぎだけど、人類の
存続にとって必要不可欠な。でなくちゃ、こんな煩わしいもの、とっくのとう
に淘汰されたっていいはずよね。」
「体毛みたいに?」
「うん。尻尾みたいに。ヒステリーってある意味、危険に対する防御だったり、
集団で生活する上での人間関係や男女関係の調節機能みたいな役割を
果たしているんじゃないのかしら。一見、矛盾するけど、赤ちゃんが、号泣
するのだって、かまってもらわなくちゃ死んじゃうからでしょ。迫りくる危険
に対して、恐怖を感じたり、周囲に自分の存在をアピールできる個体のほう
が、きっと生き残る確率も子孫を残す確率も高かったのよ。そういう
意味では、うちの旦那のかまわれたい病ってネーミングは的を得ているの
かも。むかつくけど、間違いではないという程度には。そして、それは、女性
にとって必要不可欠な要素なんじゃないのかな。」
「理屈ではなく、本能的にヒステリーになるってこと?」
「一概には言えないけど、生理的に。痛みとか、嘔吐とかと一緒で、女性が
遺伝的に授かった心理的な、性というか、機能というか。その現象だけを
見ると、煩わしいものでしかないんだけど、大きな流れの中では大きな
役割きちんと果たしている部分もあるような気がする。」
「そういう意味では、私の上質な遺伝子も、良好に機能しているってわけね。」
EVGENIAは胸を張って自信気に言う。
「そうなのよ。むしろ機能しすぎているのかもしれない。良質過ぎて。」
「なんだか救いのない話だわ。」
EVGENIAの表情は、絶望的なものへとシフトする。
「そんなことないわよ。無かったら駄目なんだから。きっと女性からヒステリー
を引き起こす機能をまったく取り除いたら、男性にとっては、全く魅力のない
女性が出来上がるんじゃないかしら。ヒステリーだって、程よく適切に機能
すれば、多分とっても有効なんじゃないかな。」
「その程よくが、難しいのよね。」
「そうなのよ。今おかれてる現状や環境が、遺伝的な適正値から大きく逸脱
しているってこともありうるし。そしたら、それを修正すべくというか、その
ストレスに抵抗して、体内のヒステリー物質が過剰に分泌されるのかも。
古代ギリシャ人に言わせれば、子宮が緊急事態を訴えているのね。まさに
子宮の危機ってやつ。今は昔よりも生活が多様で、複雑だから、一概に、
これが原因とは、言い難いけどね。ようするに女はヒステリーによって、かわ
いい存在にもなれるし、ヒステリーがあるからこそ、疎ましい存在にもなって
しまう難儀な生き物なんじゃないかしら。」
「あなたって、なかなかの哲学者ね。」
「今解ったの?人は、私のことをプチ哲学者って呼ぶわ。で、テーマは女性に
おけるヒステリーの意義について。これって哲学?今日から、ヒステリー研究家
になるか。」
「なるべきよ。絶対に必要。」

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by holly-short | 2006-07-20 23:56 | 上質な遺伝子
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