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やっぱりね、、、

b0090823_2123497.jpgMarcel Dzama
煮え切らない?週末を過ごし、、、というのも色色やらなくてはイケナイのに、思わずダラダラ過ごしてしまつた。。。←もうそろそろこういうの辞めてくれ!自分。。。それでも大好き?なディカプリオの出ている「デパーテッド」は、ちゃっかり映画館に見に行った。キャラメルポップコーンを食べながら鑑賞。先週、今いる事務所の支店長に教わった旨い!安い!早い!レシピ「塩ホルモン」に舌鼓を打ち、(まじで美味しかった。家が焼き鳥屋のようにモクモクになったけど、、、、)そんな感じで週末を過ごし、ようやく迎えた月曜日の朝、本日AM8時50分。出勤するとワタシの上司の席に人影が、、、、、、
「お!上司!ようやくご出勤されたのか????」と、思ったらワタシの上司の上司、派遣先の企業の課長さんでした!って、ことは、、、、、、、
そう。ワタシの上司は、会社を辞めたそうです。それもメール4行の短~いありきたりな文章で一方的な退職願い?というか退職通知?を感謝の言葉とともに関係者に一斉送付。。。。うわ~これだけかあ?引継ぎ、話し合いについては、一切拒否するつもりなのか電話にも出ないし、メールの返信もなし。派遣会社も本人と連絡とれずの状態だとか。。。おいおい、別に普通に辞めればいいじゃーん。「1月一杯で辞めます!さよなら~」と。いくらなんでもこれじゃあ、とっても後味悪くなっちゃうんじゃないか?こんなんじゃあ、もしどっかで誰かと又出会うことがあってもまともに話すことも出来なくなっちゃうよお。。。(まあ、話したくもないのかもしれないが、、、)大体次の転職先だって、決まったのか決まってないのかは、知らないけど同じ業界になる可能性が一番高いのに~。なんて、思うんだけど彼には彼なりの致し方ない心境があったのかなあ?とにかく本人が消えてしまった今、彼については何も解かりませぬ状態。上司の課長も目が点だ。。。。。まあ、とはいっても大きな会社なので現状の説明と引越しの手配、彼の不在の穴埋めについて適当に話し合って帰っていかれた。そして、最後に彼の言った一言にワタシの眉間にも皺がたくさん寄っちゃったのでありまする~。。。皺を刻まなくちゃいけないのは、眉間じゃなくて、脳みその方なのに~。。。。
「これで、×××さんも、すぐには辞められなくなっちゃたね!」だって、さ。
おいおい、ワタシは社員じゃないんだゾ!派遣だし、2月以降は現状違う場所での契約も無い身なのだ。彼の不在について、責任を持たなくちゃいけないのは、責任者であるア・ナ・タ・であって、ワタシには何の関係もないことなんですけどおおおお。←ってのは、本音で、本番では、「え~そんなことないと思いますけど、、、、」と眉間に皺を寄せ苦笑いしてみました。彼もワタシの困惑顔の反応に、「ま~この話は後々、、、、」なんて言葉を濁しつつも、「でも少なくとも一ヶ月はいてもらって一ヶ月間の流れをみてみないと残された方も困るよねえ。何も解からないし、営業担当がいなくなった今、何か問題が起きても誰も聞く人がいないんじゃあ、こっちとて話にならないしい。」だってさ。。。まあ、言わんとしてる事は解かるけど、ワタシにもワタシの計画があるんですけど、、、、。(まあ、確固たる計画が無い身だからとっても受身になってしまうのだけどさ。。)ワタシの意向については、もっと強く主張しておくべきだったかな。又しても反省しちゃうのか?う~ん、まったくワタシも懲りない奴だ。そして、もうどうでもいいやという心境。とにかく自分のことを考えよ~と。ま、行けばお給料も貰えるんだし、適当にゆるゆると有給消化しつつ働くか。、、、、、、、、、、?←な~んて、こんなこと思っているとまたズルズルと別れられない男女関係のように引きずられてしまうのだなああ。
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by holly-short | 2007-01-22 20:06 | diary

ワタシの脳味噌。。。

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 さーて、2月で仕事も辞めることですし(気分はもう終了してるケド、、ってことで、辞めるぞ!早く辞めさせてくれ!)すぐに就職活動する予定のないワタシはしばしお勉強でもしてみるキャ、、、、という心境。うわ〜こう書いてみるとなんかゆる〜い。こんなんで大丈夫なのか??元来暇にすごく弱いので、何かしないとマズイという気持ちもあって、三食昼寝付き?の生活をよいことに、イヤイヤそれに感謝しつつ、せっかくだからお勉強でもしてみようかと。。。。で、気分を盛り上げるため読書中。そうそう、ワタシっていつも実質的なことをほったらかしにして、その周辺ばかりに気をとられ、盛りあげることばっかりに精力を使い自己満足してしまうのだ。。。解かっちゃいるけど、辞められない。←あ〜これは、今後マジで改善せねば〜って、よく考えたらこんな文章を書いていること自体これに値しちゃうのだけど。。。。でも、自分のこと書くのは楽しいので辞められな〜い。
 
 ワタシは前々から身体の話や脳の話が好きで、難しいことは解からないんだけど、一般向けに書かれたそういう本は駝鳥さんの趣味もあいまって家にゴロゴロしているのでよく読みます。養老孟司なんかも読みやすいものはスゴク面白くて脳味噌の観点から物事を観るその視点や見解に驚かされることしばしば。今、こうして自分が文章を書いたり考えたりしている最中も自分の意思とは別に脳味噌がフル回転に活動していて、その意思そのものも含めて制御されている。んんんん〜不思議。まるで小さな宇宙が頭の中にあるようだわ。で、今回「脳の学習力」(子育てと教育へのアドバイス)という本を読んだので、ここにメモしておく。

 『脳はあらゆる種類の学習を可能にする機械であること。学習に年齢制限はないということ。学習はどんな年齢でも出来るもので、学ぶのに遅すぎるということはないんだってさ!老年になると多少能力は減退するが、脳は老年になるまで、可塑性を持ち続けている。一般に脳は使われる頻度に応じて変化する。使わなければ、失われてしまう。脳は、いつもその環境に適応していく。』

 なんて、自分に都合のよいところをピックアップしてみた。で、文中に素敵な表現があったので、それもついでにメモ。

 『学習についていえば、教師は庭師に似ている。教師は庭師のように学習する人の心に種をまき、よいアイディアや重要な事実に栄養を与えたり支柱をつけたり、誤解や間違いを取り除いたりする。よい庭師というものはすでにあるものを生かして誰も想像しなかったような素敵な庭を造ることが出来る。ガーデニングとおなじように何を素晴らしいと観るかについては、多くの考え方があるし、文化の違い、時代の流行もある。それでも、それぞれの庭にあるものを最大限に生かして、とても斬新で、みんながいいと思うデザインに仕立てあげることもできる。庭師が庭の手入れをするように、庭師の仕事にも終わりは無いのである。。』

 ワタシのバヤイ専属の庭師を雇うゆとりもないので、とりあえず自分で荒地を耕すとこからはじめてみますかね。。ゆっくりじっくり耕して、いっぱい栄養を与えて、今どうにか育っている奇妙な植物たちも見守りつつ、自分好みの植物の種でも空いてるスペースに植えてみるかな。。。。 push! blog ranking!!!
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susan jamison
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by holly-short | 2007-01-21 00:09 | diary

そして、誰もいなくなった。。。。

b0090823_21312192.jpg ian dingman art work
 全然ブログを更新出来ません。なぜって、それは忙しいから。まあ時間は自分で作るものとよく言いますが、なかなかブログを書ける時間も、、、というよりも気力もゼロな今日この頃です。さて、仕事の方はといえば、ついに上司がいなくなりました。言葉のまま、ある日突然来なくなったのです。失踪って奴です。数日前、私のメールに「お休みします。後は宜しく!」って送られてきたきり、何の連絡も取れず、会社に対してもそのまた上の上司に対しても何の連絡もなし。電話をしてもメールをしても回答ナッシング。なしのつぶて。。後は宜しく!の後って、もしかして、後全部?ってことか???ここの事務所にはワタシの上司とワタシしかいないのに(別会社の人は沢山いますが、、)現在ワタシは独り寂しく、じゃなくて独り楽しく♪書類整理をしているってわけ。それにワタシも早く辞めたいので、引継ぎ書を作成中。派遣会社と派遣先企業に対して、2月以降の引継期間と引継担当者を決めてくれ!ワタシ的には二月半ばまでで充分だと思いますが!、、。と、再三打診しているにもかかわらず、双方口を開けば曖昧に言葉を濁すばっかり。「私のやっている業務内容が解からない。」「どれくらいの引継ぎ期間が必要かも2月以降になって状況をみてみなくては解からない。」「しっかり完璧に引継ぎをしてくれなくては困る」「引継ぎ担当者が見当らない」「今は他のことに忙しくて、頭がまわらない」などなど、煮え切らない言葉の数々。別に、そんなら私も引継ぎなんてしなくても全然構わないんだけどなあああああ。ほら私の上司だって姿をくらましてしまったじゃないですか。。大体私の業務は、いちおう上司の指示あって進行するものなので、その上が消えてしまった状態では引継ぎといってもウマクいく筈ないのですが、、、、。と言うよりもこの状況でこれ以上ワタシももう責任もてまへん。なんとか、その場その場で臨機応変に会社の方針に則って対応していくしかないんとちゃいまっか?としか言いようがないのだ。今だって、上司の不在によって、宙に浮いてしまっている案件がいくつもあるのだよ。客よりいつ出社するの?と聞かれれば、、、、しばし黙って多分来週?、、、、などと曖昧に答える日日。うーん、どうなることやら?でも、まあワタシの気持ちは年の変わり目を境に切り替わってるから深刻な気持ちは一切無く、人事なんだけど、、、。とにかく早く引き継ぎを終わらせてここを去りたいばかりのワタシなのですが、今後の方向性については、すべて闇の中。引継ぎについても、契約終了時期についても、上司の失踪についても、決定的な発言については責任者も派遣会社も避けるばっかり。。。とりあえず、そこで(他社)体裁を保つ為にもちゃんと働いておいてくれ!と言わんばかり。別にいいけどさ。ここを引っ越す時には私も一緒にここを去りたい気持ちで一杯だ。もう気力も一杯一杯なのだYO。なんて、ブログに愚痴を書いていても何も事は動きませんね。この際、いっそワタシも失踪してみるか、、、でタイトルに続くわけでーす。う〜ん、上司!なにしてるんだろう?(絵みたいな感じを勝手に想像。。。。現実はそう甘くないか。。 push! blog ranking!!!
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by holly-short | 2007-01-19 21:32 | diary

にわかエスキモー。

b0090823_2319163.jpg rachell sumpter


日本のお正月明け、といえばバーゲン。と、いうことで2回程バーゲンに行ってきました。いつもバーゲンの時は下着や日々の必需品を買う!と心に決めているのですが、今回は随分出遅れて、ろくなものが残っていなかった。。。(悲しい)いつものことだけど、張り切って意気揚々と狩に出かけ、なにも射止められず帰路に着くというのは、とても疲れます。時間をすごーく無駄にしたような感じ。まあ、買いもの自体を楽しめばいいのですが丸腰で帰ってくるなんて、もう買い物なんていかない方がマシなんじゃないのか?なんて極端に思ってみたり、、、(またスグに行きたくなって行く癖にね。。)しかし、張り切って今回ばかりは切望していた靴をようやく射止めてきました。しかも、2匹も。。。(本当に靴がなくて困っていたのです)一組は黒のエナメルローパンプス(←いちおう会社用?)もう一組は、ただ見て履いて惹かれて買ったブーツ。残念ながら、バーゲン対象外だった、、、とほほ。でも、なんとなく履いてみたらスゴークしっくり、いい感じに(独断)思えたのでゲットしてきました。とっても、とっても温かくて室内で履いてると思わず脱ぎたい衝動にかられます。(いやマジで熱いのよう)しかし、寒い昨今外出する際には打ってつけなのだ。履いてるだけで、身も心もぬくぬくとエスキモーになったような気分でそこら中を闊歩できちゃう。次なるターゲットは、ロシアで被っているようなシッポのついた毛皮の帽子かな。。。。んんん〜いくらなんでも浮世離れしちゃうかもね。でも、ほしい。

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by holly-short | 2007-01-08 23:22 | diary

暖炉のある生活。

b0090823_23104398.jpg <Balthus>
←バルテュスの絵画の世界観が大好き。少女の絵、だけどとてもエロチックで女を感じさせる。これはバルテュスの中でも大好きな一枚、「美しい日々」


 お正月、駝鳥さん(夫)の実家でゴルフ三昧の日日でした。ワタシはゴルフ大好きなので楽しかった。だいたいお正月は駝鳥さんの実家に遊びに行き、ワタシの実家には帰りません。とても遠いので両方はいけないのです。(と、いうか正月にワタシの実家に帰ったことないな。。。そういえば)そして、駝鳥さんの実家はお義母さんが2年前に他界され、お義父さんが独りで暮らしているのでお正月はそちらへ、、、そんな正式な機会でもなければ、なかなか行くことがないのです。ってことで飛行機でひとっ飛び。独り者になったばかり?のお兄さんとお義父さんと駝鳥さんと、なかなか男性ばかりなので、はずむ会話にも乏しく、オセチをつつきながら皆テレビばかりに注目。。。気を使って場を盛り上げることが出来る人材がおらんのだ〜。ワタシも含め皆勝手ものなので、気がつけば皆単独行動に走る走る。こんな時にはゴルフがとても便利だったりします。会話なくとも皆で一日中和気藹藹と強制的に過ごせますからね。お昼も挟んでのんびりと〜丸二日間ゆるゆると家族で過ごしてまいりました。ウチの父親(マイゴルフコーチ)ともそうだけど、年配男性(特に年寄り?)とのコミュニケーションはゴルフが一番ですます。

 さて一人暮しのお義父さん、今年の冬は家に暖炉を設置した。噂では、聞いていたのですが、本当に家にいくとメラメラと暖炉の中で火が燃えておりました!「今日、そんな寒くないんですけど、、、」なんてツッコミは他所に、どんどん薪をくべるくべる(薪ってくべるって言うんだね!くめる、かと思っていた、、、、)メラメラメラメラ燃える燃える。だいたい「南国××」って言われるくらい暖かい場所に住んでるのだ。暖炉なんていらないだろーいるわけないだろーなんて思っていたケド、御本人は大満足で御満悦で薪をくべ、けして暖炉から離れようとしない。しかし、始めは馬鹿にしてた?ワタシも次第に暖炉の魅力に取り付かれてしまいまった。なんていうか、なんか温かさが本当に温かいの。、、、、?嫌な温かさじゃなくて、マイルドな温かさって言うの?やんわりじんわりみたいな?心の底から温めてくれるみたいな優しい温かさって言えばいいのかな。火って、なんだか不思議な存在感と魅力あるのだよ。見ているだけで、ちょっと心踊る感じ。メラメラとメローな、、。お義父さんいわく、燃えている火には、ざっと人間7人分の存在感があるとのこと。(そんなに?)火がないとなんとなく寂しい。暖炉があるとなんとなく心あたたまるとのこと。なーる納得。(でも、夏はどうするんだ?キャンプファイヤーか?なんてワタシのくだらないツッコミは置いておいて)ワタシも夜、暖炉の前にロッキングチェアーを置いて小説なんぞを(シッピングニュース)を読みました。んんん〜今思えばとても贅沢な良い時間だったな。パチパチっとたまに弾けるような音が暖炉から聞こえてきて、それがまた何ともよい感じなのだ。上にヤカンを置いておくといつでもお茶が煎れれるのだよ♪ワタシもいつか、絶対に暖炉がほしい〜。なんて、今のアパート暮らしでは、暖炉など置くスペースなど微塵もなく、まあそれ以前の問題か。。。

 自宅に帰ってきた私は、相変わらずホットカーペットに張りついてこれを書いている。そして、とてもとても暖炉が恋しい。

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by holly-short | 2007-01-03 23:21 | diary

はじめて書いた短篇小説。

あけましておめでとうございます。

2007年の朝です。んんんやはり普段となにも変わらなーい。
テレビをつければお正月ムードも高まるってもんかもしれないけど、
ワタシは殆どテレビを見ないのでやはりつけない。
お正月、ってことでワタシがはじめて書いた短篇小説は、いちおうお正月っぽいので、
ここにUPしてみます。

はじめてちゃんとまとまったものが書けて、文芸誌(って言うのかなあ??)に
載った超ラッキー?ファーストラック満点の作品です。
2000年ってことで、実に7年前だ!ワタシも年とったな〜。
本当はこういうのって、UPしちゃいけないの?なんて思ってみたりもするけど、、
なんかすべてをここに集約したい衝動にかられ、、、、
それに誰かに読んでほしい欲求にも突き動かされ、、、
まあ、後藤さんは気にしないでしょう。心のひろーい御方なので!元気かなあ。
(あいかわらず赤い靴下はいて、そこら辺をうろうろしてるのでしょうか、)
今度会う時は、赤い靴下をプレゼントしよう。

それではお正月スペシャルってことで、、、、(なんだそりゃ、、、)
※※ あまりの字の多さに一回でUPしきれず、、、前半、後半でわけてUP。

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↓waste land 別冊。
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by holly-short | 2007-01-01 10:56 | diary

ゆらゆらと  (後半)

 特養はシンと静かな場所である。病をかかえた老人が何をするわけでもなく、ぼんや
りと時間をやりすごしている。殺菌されたように無機質でガランとした空間にさまざま
な匂いが湧くように漂う。薬の匂い、消毒の匂い、リネンの匂い、食べ物の匂い、排泄
物の匂い、さまざまな生活の匂いが漂う。そんなあからさまな生活臭に、はじめ違和感
を感じるが、そのうち慣れてしまう。慣れてしまえば、なにも感じなくなってしまう。
すべてが日常と化してしまう。

「お前さん、お前さん」
3階の廊下の隅に並べられた机に座ってテレビを見ていたら、車椅子に座った小柄なお
爺さんがずんずんと近づいて来た。お爺さんは、不思議な形をした毛糸の帽子をかぶ
り、黄色い顔に張り付けたような細い目をパタパタと開けたり閉めたりしている。ずん
ずんとやってきて、ぬっと私に顔を近づける。
「お前さんは、どこから来た?」
「私?この近くに住んでいるんです。ここにお婆ちゃんがいて」
「そうか、そうか」
とお爺さん、頷く。頷くと帽子についた毛糸のボンボンが跳ねるように揺れる。
「お前さんは、噂によると角を持っているとな、角を持っていると聞いたのだが、
ちょっと見せてはくれんじゃろうか?」
「角?」
真剣な顔で頷く。頷くたびにボンボンが揺れる。
「角って、なんの角ですか?私、角なんて持っていません」
「そんなことはないだろう、お前さんは角を持ってんだろう」
と縮んだ黄色い顔を曇らせる。そして、角だとか、白いものだとか、よく解からないこ
とを並べたて、終いには濁った舌を打ち、消えた。私はテレビの続きを見た。なにかメ
ロドラマめいたお昼の番組がやっていた。

 二人で暮らすようになってから、母は当面の生活費を稼ぐために昼間はファミリーレ
ストランで、夜はスナックでホステスをして働いていた。スナックの寮になっている小
さなアパートに二人で住み込んだ。私はそこから新しい小学校に通った。小学校から帰
ると、母が持ち帰ったお店の餃子や焼きそばなどを温めて食べた。もともと生活は裕福
ではなかったから、そんな生活には慣れているものと思っていた。母が夜の仕事に出か
けた後、私は、ずっとテレビを見ていた。それまで、テレビを自由に見ることが出来な
かったので、テレビばかりを見ていた。母から貰った小遣いでお菓子を買うのが楽しみ
だった。テレビを見たまま、そのまま朝まで寝てしまうことが習慣になった。見る番組
がなくなっても、テレビを見ていた。そんな生活は半年以上つづいた。

「お母さん、私ね、顔がヒクッって、するの。なんだか、ヒクッって、しちゃうの」
「どうして?どこか痛むの?」
「ううん、ただ、ヒクッて、どんどん出てくるっものだから、なんだか妙だなって」
「大丈夫よ。人間だもの、そりゃあ、たまにはヒクッてするわよ、顔の運動かなにか
よ」
母は笑った。何時の頃からか、顔の痙攣が頻繁に見られるようになった。頬の筋肉が無
意識に引きつり、堅く縮みあがった。一度私は、ヒクッとする時分の顔を鏡に写して見
たことがある。歪んだ顔は、なにか脱殻のようで、他人の顔のように思えた。子供らし
さの薄い、寂し気な顔だった。

 カツさんは、日本に帰ってから旦那の事業がうまくいかずに体を売って暮らしてい
た、との噂があった。そんな噂を広めているのは、チャラコという元芸者のお婆ちゃん
だ。チャラコという源氏名で熱海の民宿で芸者をしていたのだと、寮母さんから聞い
た。寮母さんも、他のお年寄たちも影で、本名は呼ばずにチャラコ、チャラコと呼んで
いた。チャラコは、大嘘つきのひねくれ物、性根が悪く、チャランポランで、いつも問
題の種だった。今日はチャラコが、昨日はチャラコが、とチャラコ話が絶えなかった。
お洒落というわけでもないが、お化粧をかかすことなく、その素顔は滅多に見せない。
染みのある大きな顔は、白く粉がはたかれ、紅は酒杯のように赤く、眉は黒く細く、元
のものよりも上にはねている。薄い頭髪は、真っ黒に染められ、いつもペタリとなでつ
けられている。黒く湿った切れ長の目も、紅のひかれたおちょぼ口もいつもニタリと
笑ってみえる。まるで魚のような顔をしている。一度チャラコとカツさんがもめたこと
があった。お昼時で、廊下に並べられたテーブルに腰をかけ、チキンライスや、ミニオ
ムレツなどを食べていた。ご飯は、仲の良いものどおしでグループになって食べる。ボ
ケている者どうし、難病患者は難病患者どうし、グループに別けられ、寮母さんや看護
婦さんの介護を受けながら食べる。12時のお昼、6時の夕食もいつもそうして食べ
る。毎度毎度のことなので、会話はあまりない。これが旨いだの、これが旨くないだの
言いながら食べる。その日、西峰さんは、リウマチが痛いと首をガンと横に振り動こう
とせず、朝食同様ベットでの昼食を楽しんでいた。私もいつものように椅子に腰かけて
本を読んでいた。その日、やけに外が騒がしく感じた。なにか叫び声のような、金切り
声のようなものが沸き、廊下に出てみると、チャラコとカツさんが何か罵倒しながらお
互いの着物に掴みかかっていた。

「アンタはいつも人の物を盗む。アンタのような淫売育ちのパンパンガールはそれだか
ら駄目なの」
とチャラコは甲高い声をあげる。
「オマエみたいな枕芸者にそんなことを言われる筋合いはないんダヨ」
「私はねえ、何を隠そう花柳界のちゃんとした芸者です」
とチャラコの尖った爪がカツさんの頬を引っ掻く。
「ギャッ」
とカツさんの平手がチャラコの肩を叩く。
「アンタが盗んだのは解かっていますよ。下品な女ですからね。この年になっても盗み
癖が抜けなくて仕方ない」
「オマエこそ、熱海の枕芸者め」
とカツさんは、平手をグーにしてチャラコの肩を叩き、目には涙をため、騒ぎを聞いて
駆けつけた看護婦に取り抑えられた。チャラコはと言えば、相変わらず尖った爪を猫の
ようにかき回している。
「アンタは、負けを知らない女ですよ。負けを知らない」
などと喚きながらカツさんの顔を引っ掻く。ベットに連れ戻されたカツさんの顔には赤
いミミズ腫れ長い線を引いていた。涙をながし、声を立てて泣く。
「峰ちゃん、私は悔しい。悔しくて、悔しくて仕方がない」
ズルルと鼻をすする。
「こんな悔しいのはないよ、悔しい、悔しい」
と体をバタつかせる。
「チャラコめ、チャラコめ」
と歯を震わせる。
「峰ちゃん、峰ちゃん、聞いているノかい。私は悔しくて、悔しくて」
西峰さんは、いつもやるようにケ、ケ、ケとやって、ケチャップ色に染まる口いっぱい
にチキンライスを頬張っていた。

 平日の昼間なのに大学病院の待合室は混雑していた。ずいぶん長い時間、女性週刊誌
をパラパラとめくっていた。母は私の横で首を垂れて眠っていた。何度か名前が呼ば
れ、そのうち私の名前が呼ばれた。その部屋は大きくも小さくもなく、空気がすこし澄
んでいるような気がした。硬く糊のきいた白衣を着た医者は、ずいぶんと若く見えた。
母にいくつかの質問をして、私にいくつかの質問をした。おだやかな喋り方で、他人の
話を聞かされている様だった。たまにチラリと私を見た。待合室から持ってきてしまっ
た女性週刊誌のゴチャゴチャとした表紙を見るというわけでもなくながめていた。

「具合はどうかな?」
「具合はいいです」
「どこか調子がよくないとか、息が苦しくなるとか、食欲がないとか、眠れないとか」
「あんまり眠れません」
「眠れない時は、どうするの?」
「あー眠れないなあって、いつもだいたいテレビを見たりします」
「じゃあ、学校では眠たくなったり、しんどくなったりしないかな?」
「別にそんなこともないです」
そんなやりとりをとりとめもなくして、何か診断書のようなものをミミズが這うような
字でクネクネと書いた。終わるとも終わらないとも解からぬようなうちに診断は済ん
だ。病院の帰りにデパートに寄った。デパートの最上階にあるレストランでハンバーグ
定食を食べ、クリームソーダを飲んだ。
「なにか欲しいものある?」
母が聞いた。私は首を横に降って、クリームソーダの中の安っぽいバニラアイスをス
プーンですくってみた。いつも欲しいものが一杯あったはずなのに、いざとなると何が
欲しいのか解からなかった。時々、曖昧になってしまうことがあった。テレビを見てい
ても、学校で友達と話していても、薄く薄まっていくような気がした。話し声もザワザ
ワとザワめき、目に写るものも背景のように他所他所しく見えた。

「氏より育ちって言いますけれども、育ちというものはどうにもならないようです。わ
たくし東京生まれの江戸っ子チャキチャキですよ。なんでもきちんと時分でやるように
育てられています。人にやってもらうのはどうもスッキリしません。わたくし、そうい
う主義です。」
と菱田さんは雑巾を硬く絞る。白い割烹着をハラリと着て、艶のある銀色の髪を一つに
まとめ、鼈甲のかんざしを刺している。
「家は料亭でしたから小さな頃から茶道や華道をたしなんでいます。だからでしょう
か、わたくし自身、躾でもなんでもきちんとしなくては我慢ならない方です」
菱田さんはキリリと端正な顔をしたお婆ちゃんで、とても85歳には見えない。私はカ
ツさんに頼まれて、ブラジルにいる娘にあてた手紙をもらいに菱田さんのお部屋を尋ね
た。カツさんは、軽いリウマチで字が書けないので、菱田さんが手紙の代筆をしてい
る。
「女学校の時分から代筆をしています。ラブレターの代筆もよくしてました」
「ラブレター?」
「そう。ラブレターは駆け引きですから、難儀です。本来、女はむやみに男にラブレ
ターを送るものではないですね。甘く見られますよ。甘く見られるから女は捨てられる
のです。女というものは惚れている振りをしては駄目ですよ。当り前ですよ。惚れてい
ながら、惚れていないふりをしなくてはいけません。好きだわ。なんてそんな言葉は、
御法度です。男の心を掴むには、さり気ない言葉です」
「そうですか?」
「そうですよ。例えば、今は春で桜が咲いていて温かいが風が吹いていて情緒的である
だとか、そんなような事に男は弱いものよ。たとえば北原白州の唄のような、凛とした
感じとか、ふっと、忘れ名草が咲いているだとかね、万葉集なんかをちょこっとね」
「万葉集?」
「わたくしはね、文学です。文学を志していたました。幼い頃から本が好きで、世界文
学全集なんて全部読みました。明治の作家が好きで、女学校では、文学で認められて、
講談社の少女クラブに紹介されましたね。女の友情について書いた文でした。両親に文
学なんかでは食べていかれないって、そんなに甘くはないっていつも言われてね、今で
も、俳句や川柳とかを書きます。広告の裏でも白いものがあれば束ねておいて、いつで
も落書きをしています。書いていると頭がスッとします。いいものが出来た時は、とて
も嬉しいものです」
菱田さんはそう言うと、朝できたばかりの俳句を赤い千代紙の裏にサラサラと買いてく
れた。カツさんの娘に宛てた手紙にはブラジルの住所が筆圧の強いしっかりとした文字
で書き込まれ、孔雀の絵柄のついた大判の切手が二枚ペタリと貼ってあった。
「カツさん、、チャラコさんと一悶着あったでしょう。あの事は、ちゃんと伏せておき
ましからって、カツさんに伝えてちょうだいね」
「あの喧嘩のこと」
「人間ですもの、いつも真面目な話しばかりやっているわけにはいきませんよ。悪口を
言ったり、それが人間の華ですもの。火事と喧嘩は江戸の華って、そんなものですよ。
年をとったって、お爺さんやお婆さんになったって人間なんて嫉妬心は抜けませんね。
だって、それが人間なんですもの」

 その日、母はずいぶんと早い時間に仕事から帰ってきた。ほろ酔い加減でフワフワと
浮くように歩いて、竹の子の皮のようなものに包まれた小さな塊をちょこんとつまみ、
「ハイ」
と言って、浮くような手つきでそれを渡す。私の手の上で、それは思ったよりもずっし
りと重たかった。
「ほら、サッチャン、食べて、食べて」
と気見悪く笑う。母が酔うのは珍しい。母は酒に強く、どんなに仕事であおってきても
能面のように白い顔を浮かべて、素面のように平然としているのだ。この母、偽物かも
しれぬと本気で思い、しかし、どう見ても母なのだ。母はフフフと笑みを漏らした。硬
く結んだ竹の子の皮の中に鮮やかな黄金色をしたダシ巻卵が在った。
「なにこれ?」
「母さんね、今日から小料理屋に務めることになったの。朝はとおっても早いけど、夜
は早い時間に帰って来れるし、お店もいかにも日本的な小さな料理屋でね、女将さんも
よい人で、今日、面接に行ってきたんだけど、すぐに採用されたのよ」
とフフフと漏らす。
「さっそくダシ巻き卵を教わったの。四角い大きな鉄のフライパンで、油をたっぷりひ
いて、卵なんて20個も使っちゃうし、こうやってね、どうやって身体をつかって巻い
ていくのよ」
と身体を揺らす。私もフフフと漏らしてみたけど、母のようにはうまくいかなかった。
「お母さんね、着物を着るのよ」
母が切り分けてくれたダシ巻卵はほのかに甘くて、すこし焦げた味がした。美味しいの
だか、美味しくないのだか、なんだかよく解からないあいまいな味がした。

 正月に西峰さんを3日間だけ外出させて、家族4人で三が日をすごそうという案が決
まった。はじめは渋っていた西峰さんも、美味しいものが食べられるなら、という条件
付きでなんとか了承した。説得したのはカツさんだったが、カツさんは身寄りが無く、
そんな西峰さんを羨ましがった。8割方の老人は、身寄りが在る無いにかかわらず施設
の中で正月を過ごすのだそうだ。西峰さんはリウマチが酷く、自分で動き回ることが出
来ないので、母は簡単な介護の仕方や、おしめの替え方などを習いに、特養内で開かれ
た小さなセミナーに参加した。私は談話室で、ジュースを飲みながら母を待っていた。
何処かからお爺さんやお婆さんがワラワラとやってきて「のど自慢」を見はじめた。

「下手くそだねえ、みんな歌が下手だよ」
「当り前だよ、みんなずぶのシロウトなんだから」
「身空ひばりは、歌が上手で上手でね、作曲家が言っているんだから本当ですよ」
「当りメエだよ。オマエ、ひばりを何だと思ってんだよ、ひばりは、天才だモノ」
「そんなら、北島はどうだい?」
「北島三郎は、駄目だよ。あいつは悪い男だもの、北島は危険な男だよ」
「この人はね、三波春男が好きなんだもの」
「私は歌手では、三波が一等好きよ」
テレビを見ながら老人たちはポツリ、ポツリと間の多い話をしていた。セルロイドでで
きた古びたフランス人形を大事そうに抱きしめたお婆さんが廊下をチョボチョボとした
足取りで通り過ぎた。
「ほら、婆さん、あんた靴の紐がほどけてんよ、ちゃんと結ばなきゃあ駄目だよ」
と一人のお爺ちゃんが注意すると、彼女は人形を近くにいた私に預けて、小さく屈む
と、ほどけた靴の紐を子供のような手つきで黙々と結んだ。人形は硬く冷たかった。手
垢で黒ずんだ顔に大きなビー玉のような目が不自然に輝いていた。お婆さんはようやく
靴の紐を結び終えて、黙って私から人形を受け取るとまたチョボチョボと歩いていって
しまう。帰りに、母と私は正月の買い物に出掛けた。商店街は派手に飾られた年末の買
い物をする人々で賑わっていた。母もそんな人たちに混じって、野菜やら、魚やらを手
にとった。西峰さんを迎える為の老人用のおむつや、下着、小さな橙色のチャンチャン
コを買った。私は、西峰さんに三波春男ベストと書かれたCDを一枚買った。

 結局、西峰さんは年を越すことなく、特養の柔かい布団に包まれて静かに亡くなっ
た。その日、母は正月の準備に忙しく朝から大きな鍋をいくつも用意し、台所を湯気で
一杯にしていた。私も食卓に積まれた人参や慈姑、蓮根や大根などの皮をせっせと剥い
ていた。突然の電話で西峰さんの死は知らされた。とても事務的で平坦なその声はまる
でテープで録音された音声を繰り返しているかのようだった。私は待ち合室で待ってい
た。書道クラブの掲示板には、冬らしい文字が一列に並んでいた。

「柚」
「冬至」
「寒い朝」
「蟹」
「正月」

まるでビー玉をはめこんだような中央に厚いレンズがはまった眼鏡を掛けたお爺さんが
日だまりで煙草をふかしてた。車椅子に座り背の曲がったお婆さんが私の隣にやって来
て、並んだ。

「おはようございます」
と私は小さく挨拶した。
「暖かいのはいいわよ、暖房は嫌い、暖房は気分が悪くなるもの」
お正月の歌を歌っているお爺さんの声が聞こえた。
「正月、正月って、何のことはない、別にここにいたら正月だろうが、何だろうが一緒
なのに」
「どこか、行きたい所でもあるんですか?」
私はなんとなく聞いてみた。
「どこかここではなくて、その時、行きたい所に行きたいのよ。ここは、異常な所だも
の。異常な世界よ。私は自由人だから、こんなところにはずっといられないもの。この
中だけが私の世界だと思っていたら、とてもじゃないけど生きていかれないもの」
「じゃあ、これからの夢とかあるんですか?」
「夢?ここでは夢はないわよ。夢はもう辞めました。母が蕎麦やうどんを作ってくれる
夢はたまにみるけど」
そう言って、お婆さんは車椅子の脇にたたまれた新聞を取り出しテレビ欄を顔ギリギリ
まで近づけて、またなにかモゴモゴと喋れ始めた。母が来て、私を呼んだ。私が離れて
も、そのお婆さんはいつまでも一人で喋りつづけていた。お爺さんが緩んだ股足袋の中
から二本目の煙草をとりだし、火をつけた。どこか遠くで、まだ正月の歌を歌っている
のが聞こえた。
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by holly-short | 2007-01-01 10:41 | short story

ゆらゆらと  (前半)

 はじめてそこに行ったのは、夏の暑い日の午後だった。そこは、特別養護老人ホーム
で、疾患をかかえる老人が集まる老人施設だ。略して特養と言うらしいが、私は始め特
老だと勘違いしていて、なにか特別な老人が集められているのだと思っていた。白く塗
られた堅く無機質なビルヂングも、ガランと清潔な廊下もとても涼しげだ。母は、一歩
建物の中に入ると、まるで私の存在など忘れてしまったかのように先を歩いて、階段を
タンタンとのぼって、何処かに行ってしまう。まだ朝の8時前だというのに、時間は
ゆっくりと希薄な感じがした。窓ガラスには、星型のシール、大きな文字で書かれた誰
かの名前、天井からはオリガミを細かく切ってつなぎあわせた紙飾りがダラリと色褪せ
ている。色紙や包装紙を細かくちぎって張り合わせた大きな夜空に天の川。書道クラブ
と張り紙されたボードには、半紙がヘラヘラと扇風機にあおられていた。

「暑い夏」
「涼」
「朝顔」
「西瓜」
「七」
「ぬ」

壁に掛けられた大きな黒板には7月の行事が大きなしっかりとした文字で書き込まれて
いる。それを見て、「あ、」
と、一言、言葉が漏れた。誰もいない廊下で、言葉は吸収されるようにシュンと消え
た。七夕であった。白い制服を着た看護婦が私の横を忙しそうに通りすぎた。私は、母
の後を追い長い廊下を歩き、階段をのぼった。階段と廊下をつなぐ境目には、小さな鈴
が所々についた木製の柵が立てかけられていた。通り抜ける度にシャリンシャリンと鈴
が鳴る。寂しい幼稚園の様にシンと静まりかえっている。ずらりと並んだ大部屋の前を
ウロウロとしていると、一つの部屋の中から母が顔を出し、私を見つけた。

「サチ、サチ、早く、来て、来て」
と手招きで私を呼ぶ。部屋の中はパイプベッドが並んでいる。数人の老人がそこで暮ら
している。ベットは大きな白いカーテンで仕切られ、西峰さんは窓際のベットに体を横
たえ、落ちくぼんだ小さな目をショボショボとさせていた。西峰より子と書かれた名札
がベットの背もたれにかけられていた。白い下着のような着物を着ていた。頭髪は白く
薄く、顔はたくさんの皺でにぎわっている。男性とも女性とも区別のつかない不思議な
生き物に見えた。私が母の横に来ると西峰さんはゆっくりと腰をあげた。

「どなたさん?」
その声も、言葉もしっかりと重く思わずギョッとした。母はニコニコと笑顔を浮かべて
私を紹介した。
「これが娘のサチです。ほら、サチ挨拶しなさい。あなたのお婆ちゃんなのだから、西
峰より子さんと言うのよ。」
と楽しげに言う。
「こんにちわ」
と挨拶して軽く頭をさげた。吐き出された言葉はまたどこかに吸収されてしまうような
気がした。西峰さんは、表情ひとつ変えず、にこりともせず、その白目とも黒目ともあ
いまいに落ちくぼんだ2つの穴の中から私を覗いた。すーと息を吸い、モヤモヤとした
欠伸をかいた。うだうだとそんなふうにして、また柔かそうなベットに横になった。母
は、お土産にと持ってきたカラフルな毛糸の靴下を西峰さんに渡し、またニコニコと何
か天気のことや、仕事のことを話した。西峰さんは、といえばどこか虚ろで今にも萎ん
でしまいそうだ。ボケているのだと思った。母は一通り、喋り終えると、チラリと時計
をみて、
「じゃあ、私は婦長さんに挨拶をしてくるから」
と、私を置いてどこかにいってしまった。
私は、大きな窓から覗く手入れのわるそうな庭や、細く汚い川をぼんやりとながめてい
た。たっぷりとしたカーテンの隙間から漏れる日の光、白っぽい部屋に溜まる。西峰さ
んは小さく小さく萎んで、そのしなやかな皺の中に心地よく眠った。私は白い布団の小
さな膨らみを眺めていた。ベットの上に広げられたままの下着や靴下を一つにまとめて
小引出しの上に並べた。西峰さんの小さなからだに掛かる白い布団はヘニャリと柔か
く、わずかに湿っているように思えた。私も昔、こんな布団で寝ていたように思えた。
部屋は、じんわりと温かく、何処かに沈んでいく様な気がした。
 
 母は、四十台後半でタクシー運転手をしていた西峰正治さんと再婚した。正治さんは
母よりも5つ年で初婚だった。身内といえば、特養に預けられている西峰より子さんが
唯一の身内とのことだ。そんな感じで、誰に反対されるわけでもなく、特に祝福される
わけでもなく、2人は暮らし始めた。母は、長年勤めていた小料理屋を辞め、近くの惣
菜屋でパートをはじめた。

 母が、私の父と離婚をしたのは、私が小学校の低学年にいた時分だ。その頃のことは
あまりよく覚えていない。毎日こわいばかりであったような気がする。家に帰ると、厚
手のカーテンは締めきられたままで、その薄暗い部屋の中で母はいつもぐったりと横た
わっていた。空気は湿っぽく濡れていて、私を恐いような妙な気分にした。

「ただいま」
と小さく言うと、母は大抵ゆっくりと身体を起こす。疲労した顔に力のない笑顔を浮か
べて、
「おかえり」
と哀し気な声を漏らす。そして私の手を握ったり、私を抱きしめたりする。体は柔か
く、温かくて、母の匂いがした。私の小さな胸に顔をうずめ、湿った吐息を吐く。吐息
は、吐いても吐いても際限なく出てくるような気がした。
「サッちゃんってお父さんに似てるね、こうしているとお父さんといるみたい」
などと言う。そんな事をとりとめもなく続けて、そのうち目に涙を溜めたりした。母が
きつく抱くのがこわかった。

 西峰さんは、愛想がなく、無口で物静かある。ただ、小さな身体とは、裏腹に食欲だ
けはあるのだ。食べ物のこととなると西峰さんの静まりかえった表情に微かな笑みがこ
ぼれた。普段ほとんど口をきかない西峰さんと初めて言葉らしきものを交わしたのも朝
食の時分だった。どこというわけでもなく食べ物の匂いが湧くように漂い、ステンレス
の台車に二列に並んだ朝食が運ばれてきた。西峰さんは、布団の中からリモコンを不器
用に探り出し、ウィーンといういかにも機械的な音とともに上体を起こした。小さな穴
のような目を湿らせ、喉をゴクリと鳴らす。朝食はクリーム色したプラスチックのト
レーやお皿に乗せられていた。大きなコッペパンが2切れ、イチゴジャム、マーガリ
ン、薄くスライスしたキュウリ5枚、マヨネーズ、熟したバナナ1本。牛乳は、蓋のし
まる小さなプラスチックの容器に入っている。その突起した部分から口をつけて吸える
ようになっていた。
「ここは味付けが本当に上手ですからね、美味しくて、美味しくて、この時間がアタシ
は一等楽しみですよ。三波春夫も好きだけど、やっぱり食べることが一等好き」
西峰さんは、なにか憑かれたように喋り、薄い皮膜を染めた。大きなコッペパンを震え
る小さな手でしっかりと握ってムシャムシャと音をたてて食べはじめた。噛んでいるの
か、ただ湿らせているのか、上顎と下顎を上下に大きく動かしながらコッペパンを飲む
ように食した。牛乳をカプカプと飲み、キュウリをツルルと吸い込んだ。バナナを口
いっぱいに放り込み、朝食を終えると、何事もなかったようにベットを平な位置に戻し
て小さく小さく縮む。

 七夕の日だった。私は小学生で、2年生くらいだった。体育館に大きな竹が2本運ば
れ、舞台の両脇に立て掛けられた。開け放たれた扉から入る7月のふんわりとした風に
笹の葉がサラサラとかすれるような音をたてた。先生は色違いの色紙を一枚づつ配っ
た。私に配られた紙は深いブルーだった。教室内は楽しげな空気で満ちていて、思い思
いの願いに心を巡らしていた。私は紙を隠すように手で覆い願いごとを書いた。一つ目
を書いて、その隣に
「スイゾクカン ニ イキタイ」
と書いた。水族館に行きたかったのか、水族館が好きだったのか、覚えていない。理由
など無く、一つ目が哀し気なものだから、なんとなく書き添えてみたのかもしれない。
数日後、夜遅くに担任の教師がアパートを尋ねて来た。母とすこし話し、私に宿題を忘
れないように、と忠告して暗い夜道を帰っていった。母に、理由を尋ねると、PTAの
ことでちょっと、と言葉を濁した。

 母は、よく西峰さんにちょっとした土産を包んで、面会に出かけた。仕事のない日曜
日などに私が暇そうにテレビでも見ていると、母は煮物やお浸しなどをこしらえて、
持って行くようにと言った。はじめのうちは、気持ち悪いような照れくさいような心地
だった。そのうち暇でも暇でなくても、母がこしらえた煮物やお浸しなどをつまみなが
らセカセカと支度をして、西峰さんに会いに行くようになってしまった。

「こんな年寄りの所にねエ」
と西峰さんの向かいのベットで暮らすカツさんは言った。西峰さんは母がこしらえた里
芋の煮っころがしをプラスチックのフォークで懸命につついていた。口をポカンと開け
たかと思うと、
「あんたの母親は、料理が上手で、上手で、正治さんは幸せものです」
と言う。里芋を口に入れ、ネトネトとやる。ネトネトとしばらくやってゴクリと飲む。
「はやく結婚しなきゃあ、いけないヨ。結婚は第二の人生だから、結婚はいいもの、い
い人と結婚しなきゃア駄目ヨ」
カツさんはそんな話が好きだった。カツさんは幼い頃にブラジルに移り住み、30年間
をブラジルで過ごした。
「主人とはね、それが不思議なことに縁があったんでしょうねえ、キューピットです。
ブラジルにはコーヒーを飲ます場所が在るんですけれど、そこで主人とはじめて出会っ
た。目が合って、似た様な顔があるなって、以前にも何処かでお会いしましたねって、
言われて、その一言でその日から暮らし始めたの。不思議でしょう?でも、それだけ
よ。」
 カツさんはよくブラジルの話をした。話し始めるとなかなか終わらない。終わらない
話についつい引き込まれてしまう。
「ブラジルはいいわよオ。だって、着物を縫わなくていいでしょう、だから最高なの。
気候も一年中いいし、さわやかで、温かくて、あなたも、気候がよい所にお嫁に行かな
くちゃ駄目ヨ」
聞いているのか、いないのか、西峰さんは不気味な薄ら笑いをケ、ケ、ケ、とやって後
はお茶をすすったりする。カツさんは、そんな西峰さんを峰ちゃん、峰ちゃんと呼んで
いる。
「峰ちゃんはね、ぜんぜん私とはタイプが違うんだけど、私のいいお友達、いつも私の
話をヨオーク聞いてくれるもの、こんなにヨオーク聞いてくれるのは峰ちゃんだけヨ」
西峰さんは、またケ、ケ、ケ、とやる。
「私はとにかく金キラキンで派手なのが好きなんだけど、峰ちゃんは地味ヨ。峰ちゃん
は、地味、地味。派手なものは嫌いだもの。洋服だって、注文するんでも、なんだか男
みたいな、下着みたいな地味なものばかり選んで、私が赤やオレンジがいいワヨなんて
言っても、首を横に振るばかりでショ。ブラジルではね、旦那と寝る時には、派手な物
をつけなさいっていうの。裸で寝る人も多いみたいだけど、まあ、そう教育されるの。
それで年をとったら、旦那の若返りの為に赤い下着をつけた方がいいって、しめるよう
な紐も赤いような派手なものにしなさいって。不思議なのヨ。老人ホームなんて色気も
へったくれも無いと思っていたけど、お婆さんもお爺さんも色気はたっぷりなのよ。男
と女なんていくつになっても色気が憑き物みたいにとれないノ」
とニコリとやる。笑うと金歯がキラリと光る。

 何日かして母は今度の休日に水族館に行こうと言いだした。私が黙っていると、行こ
う、行こうと言って、私の髪を撫でた。水族館は日曜日にもかかわらず人が少なかっ
た。水層の中には色々な種類の魚が漂い、不思議な形をした生物が暮らしていた。私た
ちは水槽に張り付くようにして水族館を眺めて廻った。小さな会場では、アシカの
ショーが行われていた。人が少なく、寂しげだった。それでも母はずいぶんとはしゃい
で見えた。ドーム型をした水槽の中央に在る皮のソファに座って母が買ってくれたソフ
トクリームを舐めた。舐めおえると、水槽の中をゆらゆらと漂った。同じところをぐる
ぐると廻っているだけなのに、飽きもせずにゆらゆらと漂っていた。

「私、魚に生まれてくるんだった」
母がポツリと言った。
「うん」
「こんな狭い水槽に住む魚じゃなくて、もっと温かくて、ずっと広いところに住むの」
「うん」
「ごめんね、母さん駄目みたい、イロイロ駄目みたい。ごめんね」
「そう」
なんで私に誤るのか不思議だった。不思議に思っただけで、言葉にならなかった。哀し
いような、哀しくないような、モヤモヤとした渦が溜った。涙は流れなかった。ゆらゆ
らと漂っていたから気がつかなかったのかもしれない。母は私の手を握った。しかし、
漂っているとその感触はあまり伝わってこなかった。私は無表情にゆらゆらと水槽の中
を漂うだけだった。
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by holly-short | 2007-01-01 10:30 | short story

あけましておめでとう。

b0090823_157222.jpg←我が家のリアル年賀状です。ワタシ作ではありませぬ〜。。。念のため!

 さて、2007年です。どんな年になることやら、、、とりあえず近所の箱崎宮へ(徒歩2分)初詣に行ってまえりました。。。と、いってもあまりの長ーい行列にへこたれて、神前へ参詣はせず、、、なんとなくボーと群衆を眺め、遠くで響く鐘の音に耳を澄まして、(箱崎宮では鐘は鳴らさない。なんか変な太鼓の音がドンドンドンドン鳴り響いていた)寒さに震えてそそくさと帰ってまえりました。また、空いた頃に行こう。たぶん、今日はもう寝てしまいそう。。。身も心も冷えたので現在ホットミルクでウォームアップ中。。。うまーい。。。そして前々から気づいていたけど、、、今年のワタシは厄年!とりあえず今年は前厄とのこと。。。ってことは来年は大厄ってことか、、、、大厄がさっても、後厄というのがあるらしい。。。。しつこーい。3年は大人しく?暮らせってことか??んんん〜がっくし。別にこういう類のものを真剣にとらえるタイプではないんだけど、、、デカデカと看板に書かれているので前を通る度になんとなく気になっちゃうわけです。結局は、厄払をしなさい!っていう宣伝なんだろうけどさ。。。。やはり、この際、厄払でもしてみちゃう?、、、備えあれば憂えなし?、、、、ってことで完全に乗せられている気もしないではないが、、、、。なんか厄でも払って欲しいような気分だったりもするし、、、。しかし、この厄年!人の一生のうち厄に遭遇するおそれが最も多い年とのこと。それって、大半は病気のことを言うんだろう。きっと統計的に、もしくは経験値からこの年回りに大きな病気にかかる確率が高かったんだろうな。昔の人は、、、、。今じゃ、寿命もずいぶん伸びたんだし、もう少し後にしてくれてもいいんじゃなかろうか。。。それとも、やはり呪われた年回りなのか?、、、、、、今年こそは、大人〜しく自分の為に時間を使おう!(おいおいいつも自分の為ばかりに時間を使ってんじゃーん!)仕事も辞めるし、ゆっくり3年間かけて(そんなに??)自分の人生設計を組み直すか、、マジで?。。まあ、とにもかくも変化の年ってことで、やれることを地道にやるしかないのでしょう。(結局それかよ。。。)後、今年中にやっておきたいことの一つに脱毛!があります。最近の脱毛はとっても優秀と聞き是非脱毛したーいと。私はプールにも通っているので、処理が面倒。その処理における手間隙を考えたら、多少のお金も惜しくないではないか。年内に脱毛して動物から人間になるぞ!!?

 さてさて、お正月は家族でゴルフツアーへ行ってきます。しかし、天気予報は雨。雨。雨。うーん、手厳しい。とりあえず晴れることを祈りつつ、おやすみなさーい。そして、今年も宜しくお願いします♪

push! blog ranking!!!
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by holly-short | 2007-01-01 01:51 | diary